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令和5年第1回江津市議会定例会の開会にあたり、当面の市政運営に対する私の基本的な考え方を申し上げます。
昨年末以来、私が市長に就任して初めての当初予算編成に臨んでまいりました。
第2期江津市版総合戦略における重点施策を引き続き推進していくことはもちろん、スマートシティ江津推進構想に基づくDXの推進を念頭においた編成といたしました。
我が国は、国の根幹たる経済においては、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)への投資を柱とする「新しい資本主義」の実現を目指すこととし、国の最大の課題である人口減少においては、「次元の異なる少子化対策」と銘打ち、少子化を食い止める施策を実行することとしています。
本市においても、我が国が目指す方向と軌を一にした施策を実行することで、市民のWell-Being(ウェルビーイング)の向上に邁進してまいります。
それでは、はじめに新型コロナウイルス感染症について申し上げます。現在の本市の感染状況は、1月上旬に第8波のピークを迎え、以降は減少傾向にあります。
また、国において、今年の5月8日に現在の2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に移行することが決定されたことを受け、これまでの政策や措置の見直しが進められています。
本市においても、国・県と歩調を合わせ、5類への移行に伴い変更される内容の周知や、基本的な感染防止対策に努めてまいります。
対策の一つであるコロナワクチン接種についてですが、令和3年3月に開始したワクチン接種も2年が経過し、市内では、約2万人が接種を受けられました。
現在実施している接種については、3月末までの予定になっていますので、広報「ごうつ」及びホームページで周知していますように、ワクチン接種を希望される方は、必ず3月末までに接種を受けていただきますようお願いいたします。
次に地域医療提供体制の確保についてです。
ご承知のとおり、済生会江津総合病院においては、今年度末で3名の医師が退職され、その補充についても今のところ、目途が立っていません。
令和5年4月からは常勤医師10名体制になることから現在、救急医療体制維持のため、外来診療の縮小や病床の再編等を検討されている状況です。
また、周産期医療に関しましても、6月以降は産婦人科の常勤医師が1名体制となるため、分娩も中止されると伺っています。
本市の医療体制について、市民のみなさまには大変な不安と心配をお掛けしているところです。
この状況を早急に打開するため、県や病院との連携を密にし、大学病院に対して、医師派遣を強く要請しています。残念ながら、今のところは十分な医師確保に目途がつく状況には至っていません。
また、県に対しては、二次医療圏における救急医療体制や周産期医療体制の維持を踏まえた積極的な支援を求め、近隣病院にも協力、支援を依頼しているところです。
いずれにしても、安心・安全な医療を提供するためには、医師や看護師等の医療従事者の確保が重要な要素となります。
本市では、地域医療拠点病院の医療従事者不足や開業医の高齢化、後継者不足など様々な課題を抱えています。
今後も解決に向けて、拠点病院や医師会等との情報共有のもと、関係機関と連携を図りながら、医師・看護師確保等を含め、安心して暮らせる医療提供体制の維持・確保に全力で取り組んでまいります。
次に、子ども医療費助成事業についてです。
本市では、人口減少に比例して、出生数も年々減少しています。特に、コロナ禍において、更にその傾向が進んでいます。このような状況に鑑み、安心して子どもを産み、育てられる江津市の実現は、急いで対策すべき喫緊の課題であると理解しています。
このため、子育て支援の拡充について、私の公約としても掲げてきたところです。
このたび、お子さんの医療費の本人負担分を助成する「乳幼児等医療費助成事業」について、令和5年度からの名称を「子ども医療費助成事業」に改め、助成対象を18歳まで拡充することとしました。
こうした子育て家庭の経済的な支援の充実が、子育てをしやすい環境づくりの推進に貢献するものと考えています。
続いて、仮称第2江津中央団地整備事業についてです。
本市では第6次江津市総合振興計画及び江津市住生活基本計画に基づき、老朽化が目立つ公営住宅の計画的な集約・建替えを進めています。
仮称第2江津中央団地の建設は、平成27年に総理大臣認定を受けた江津市中心市街地活性化基本計画に基づき、島根県24戸と江津市15戸の計39戸を整備するものです。
市営住宅15戸については、高齢化社会の進展への対応として、本市の市営住宅としては初めて高齢者向けのシルバーハウジングとして整備することとしました。周辺の公共施設の立地等により、高齢者の方々にとって最も利便性の高い住宅になると考えています。
(スマートシティ江津の推進について)
続いて、スマートシティ江津の推進についてです。
昨年9月に制定した「スマートシティ江津推進構想」は、第6次の行財政改革としての取組みの方向性等を明示したものです。
スマートシティとは、人口減少の進む社会において、行政の予算や人材が減少するなかにあって、例外のない改革を進め、デジタル技術を最大限活用するデジタル・トランスフォーメーション、いわゆるDX、を進めることによって、様々な業務等を最適化し、企業や生活者の利便性や快適性の向上を目指すまちのことです。
現在、スマートシティ江津推進構想に沿って取り組む内容や目標を示したアクションプランの年度内の策定を目指しているところです。
来年度は、自治体情報システムの標準化・共通化などの国の定める義務的なDXと、市民サービスの改革・業務プロセスの改革・人と組織の改革という市独自の自主的なDXの両方について、具体的なテーマごとの調査研究、企画立案に取り組むこととしています。
次に、生活困窮者自立支援事業についてです。
本事業については、生活困窮者自立支援法の施行に基づき、平成27年4月から江津市社会福祉協議会に委託して実施しています。現在は、必須事業である相談支援事業、及び任意事業である家計改善支援事業を実施していますが、国において、新たに「就労準備支援事業」の必須化が議論されています。
この、「就労準備支援事業」は、基本的な生活習慣の欠如や就労意欲が乏しい対象者に対し、一般就労に従事する準備としての基礎能力の形成を計画的、かつ、一貫して支援することにより就労に導くものです。
事業実施にあたっては、全国でこの分野に実績のある団体の協力のもと、江津市社会福祉協議会と新たに組織する共同事業体により事業を実施し、生活困窮者等の自立支援を強化してまいります。
次に、防災対策についてです。
ご承知のとおり、近年、大雨による災害は激甚化、頻発化しています。今年度は、本市では、幸いなことに大きな災害は発生していませんが、この10年で4度の大きな浸水被害に見舞われてきました。
これらの抜本的な対策のため、築堤、かさ上げ、移転などの治水対策を進めていますが、一朝一夕にとはまいりません。スピード感を持った対応を行うためにも、令和2年度から小規模の内水排除用に、可搬式の排水ポンプを各地域に整備してまいりました。
令和5年度は西部地域にも排水ポンプの配備を進めてまいります。併せて、防災備蓄品や水防活動の資機材、防災資機材倉庫についても、整備、拡充を図ってまいります。
なお、先月には島根県から桜江地域に大型排水ポンプ車を1台配備していただいたところです。
次に、各地域におけるソフト面における防災対策についてです。
本市では全地域に自主防災組織が設立されていますが、それぞれ災害の形態や頻度が異なり、防災意識や取り組みには地域性があります。このため、地域に応じた避難計画、防災学習、避難訓練などへのきめ細かな支援を行い、より一層の地域防災力の向上に取り組んでまいります。
このように、今後も引き続きハード、ソフト両面から防災・減災対策の強化充実を図ってまいります。
続いて、防災集団移転促進事業についてです。
昨年11月25日に、松川町長良地区の要望書手交式を行い、緊急対策特定区間の整備方針が決定されました。
松川町長良地区においては、21世帯のうち11世帯が渡津町の市営嘉戸団地跡地への集団移転を希望されており、防災集団移転促進事業の事業計画策定のため、現在、集団移転先の造成測量設計および用地測量を行っています。
今後は事業対象者の用地補償調査を進め、事業計画の策定・大臣同意を得て、早期移転を目指してまいります。
本市といたしましても、引き続き地域住民の方々をはじめ、国土交通省および島根県との連携を図り、都市計画マスタープランとの整合性も考慮しながら、事業を推進してまいります。
次に、有福温泉再生事業の進み具合についてです。
令和3年度から観光庁の事業を導入して実施している有福温泉の再生については、令和4年度において、3軒の既存旅館を改修し、また休眠施設5軒を宿泊施設に、同じく1軒を体験施設に再生することとして事業を行っているところです。その中には、すでに営業を始めている宿泊施設もありますが、5月末までにはすべての施設で開業準備が整えられ、営業を開始する予定となっています。
事業開始時点で宿泊施設が3軒にまで減少していた有福温泉ですが、この再生事業により10軒の個性的な宿泊施設が集まる温泉街として、新たなスタートを切ることになります。
今後は、宿泊、飲食、入浴、体験など、旅行客を迎えるために必要な機能を一つの旅館が備えるのではなく、機能分担をすることでまちの賑わいづくりを目指す「まるごとホテル構想」の実現に向け、引き続き関係事業者と連携して円滑に営業が開始できるよう調整を図ってまいります。
また、観光施設の整備と並行して、令和4年度は街なみ環境整備事業の導入に向けた整備方針の策定業務を行ってまいりました。この事業では、公共空間の修景を中心とした公共施設整備に向け、ワークショップや説明会を実施しました。令和5年度には事業計画の策定に取り掛かることとし、本格的な取り組みを実施したいと考えています。
今後もまちの魅力を高める取り組みを継続し、多くの観光客に訪れていただける温泉街として有福温泉を再生できるよう努めてまいります。
次に統合型校務支援システムの3市3町共同導入についてです。
全国的に教職員の長時間労働が問題となっており、働き方改革の必要性が叫ばれています。
このため、教職員の働き方改革をすすめるため、教職員の校務の負担軽減を図る「統合型校務支援システム」を導入することとしました。
このシステムでは、出欠管理や成績管理、時数管理や健康診断のデータ管理、学籍簿管理などをひとつのシステムで行うことができ、校務における業務負担を軽減するとともに、情報の一元管理と共有ができることになります。
そして、この業務負担の軽減は、教職員が児童生徒と向き合う時間の増加となり、児童生徒に好影響をもたらすものと考えます。
なお、導入にあたっては、浜田教育事務所管内の浜田市、大田市、江津市、邑智郡3町が同一のシステムを共同で導入し、導入経費の低廉化を図るとともに、同管内で教職員が異動をしても、同じシステムで校務ができるよう取り組みを進めてまいります。
次に下水道事業についてです。
本市の下水道事業は、令和5年度から国の要請に基づき、地方公営企業法の財務規定等を適用し、下水道事業に企業会計方式を導入して二つの会計を統合し、江津市下水道事業会計として運営を行うこととなります。
これを受けて、令和5年度の江津市下水道事業会計予算は、将来にわたり持続的で安定した下水道経営を目指すことを目的として編成しています。
また、今後の本市の公共下水道事業の整備区域の拡大については、令和8年度をもって一定の区切りをつけることとしています。
集落排水施設のうち、桜江中央処理施設につきましては、設備の老朽化が際立つため大規模改修を行うものです。
今後も安定した収益を確保するため、接続率の向上を図り、下水道事業を進めてまいります。
次に、脱炭素の取り組みについてです。
近年、地球温暖化を原因とする気候変動の影響により、世界各地で猛暑や大雨、大規模な干ばつ等の異常気象が多発し、その対策は喫緊の課題となっています。
本市では、第6次江津市総合振興計画において「産業と自然が調和した新たなにぎわいを生み出すまちづくり」を基本目標として掲げています。目標達成に向けては、自然環境の保全やごみの減量化、再生可能エネルギーの導入など、市民・事業者・市が協働して積極的に脱炭素化に取り組むことが不可欠です。
今後は、まずは市内の状況や課題の把握を進め、本市が取り組むべき地域脱炭素についての計画作成に取り組んでまいります。
次にシティプロモーションの推進についてです。
本市のまちづくりのスローガン「GO GOTSU 山陰の創造力特区へ」は、将来にわたり、活力あるまちとして繁栄するため、ここに暮らす人々が「新たなことに挑戦する気質」や「生きる力」を養うことができる環境づくりを進め、かつ、「挑戦する人を応援する風土」を培うという江津市版総合戦略の基本理念を表すものです。
令和5年度からもこのスローガンのもと、本市の知名度向上を目指すイベントやキャンペーンを大都市圏で実施する対外的な取組みと、イベント等による市民へのプロモーション活動やふるさとキャリア教育による将来を担う子ども達へのプロモーション活動という市内向けの取組み、の2つのシティプロモーションを推進することとしています。
これにより、市外の人々に選ばれるまちの実現及び市民のみなさまの郷土への愛着、いわゆる、シビックプライドの向上を目指します。
最後に、令和5年度当初予算についてです。
一般会計の予算議案につきましては、最重要課題の人口減少対策のため、第6次総合振興計画の重点プロジェクトである「第2期江津市版総合戦略」における重点施策のほか、地域医療対策、DXの推進などに重点を置き編成を行いました。
予算規模は、本市が抱える諸課題に対応しつつも、計画的な財政運営を実施していくことを重視した結果、156億円余とほぼ平年並みとなりました。
最重要課題である「人口減少対策」については、これまで積み重ねてきた事業を着実に継続していくことが重要であると考えており、子育て支援や雇用創出など定住対策につながる予算を引き続き計上しています。
そのほか、大規模事業として、済生会江津総合病院の電子カルテシステム整備に対する補助金や高齢者対応住宅として整備する仮称第2江津中央団地の建設費などを計上しています。
また、予算編成においての基本的な考えとして、市債の発行額が元金償還額を上回らないということを念頭に置いていますが、令和5年度においても元金償還額が約21億円に対して、発行額を10億円以下に抑えることにより、大きく市債残高を削減し、将来の公債費負担を抑制するものとなっています。
一方、基金については、約12億円の取り崩しを行っていますが、令和4年度末で、一時的に残高が増える見込みとなっていることや、実際の執行段階での事業費の精査等により、令和5年度末の残高は、56億円程度は維持できるものと考えています。
今後も引き続き、しっかりとした推計を行い、健全な財政運営に努めてまいります。
なお、特別会計3会計及び令和5年度から法適用化する下水道事業を含めた地方公営企業2会計についても、所用の額を計上しています。
以上、令和5年度における主要な施策の取り組みに併せ、本市が抱える諸課題について申し述べました。
激変する社会に取り残されることのないよう、何事にもチャレンジ精神をもって取り組み、「小さくとも一層キラリと光るまち江津」を体現するべく、私をはじめ職員一丸となって取り組んでいく所存です。
どうか力強いご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げ、施政方針といたします。
アクセシビリティ向上のため、原文の表現を一部変更して掲載しています。