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民俗文化財の中の『潮かき』調査をおこないました(令和4年4月1日)

掲載日:2022年4月1日更新
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 山中のお改めとシシ狩り行事

桜江町長谷の山中の地区で行われている『山中のお改めとシシ狩り行事』は、甘の宮の祠に収められている御神体のお米を改める行事とシシに見立てたシトギ餅を弓矢で撃つ行事の複合的な行事で、400年以上の歴史があります。毎年旧暦の3月13日に近い日曜日に行われています。

令和2年3月16日に記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択され、現在、文化庁の補助事業で調査委員会による詳細な調査が行われています。

『潮かき』

この行事の言い伝えでは、行事の段取りの中に、前日にその年の役員が『潮かき』に行くことになっていました。
ただし、現在は行われていません。ものすごく昔のことなので、誰も知る人はいません。

『潮かき』とは、何だろう。潮干狩り?気になる。

古代文化センター所属の調査委員会の委員に尋ねたところ、「潮かきは潮ごりとも言い、海や川に行って、海水や川の水につかって、身体を清めることです。神事の前などに行われます」と回答がありました。

川派?海派?

『潮』なのに川でもできるのか…。

川なら江の川? 桜江町川戸まで結構距離があるけど、イベントのピクニックランなら走って1時間くらいだわ。

海なら日本海? 海なら都野津町か二宮町の海岸か?距離にすると相当あるし、行って帰ってこれるのか?

昔の人はどこに『潮かき』行っていたのか気になる。

小学校の先生をしている調査委員会の委員に尋ねたところ、「直線上で一番近い海かな?川じゃなさそう。物部神社でも海まで潮かきに行ってるよ。」と回答がありました。

海を目指して

では、本当に昔の山中地区の人たちが行事の前の日に海まで行って帰ってこれたか歩いてみることにしました。
ただし、今回の目的は山中から海まで歩いて往復できるか?とその行程を毎年続けられるか?です。

なお、現在の道路と昔の道は違うと思われますが、昔の道を基本に今の道路が作られたと仮定して歩いています。
おおまかに県道桜江金城線、市道新山中線、県道皆井田江津線、国道9号線を通過、海岸付近の市道を経由して海まで行きます。
帰りはその逆になります。
スマホの地図アプリで調べたら片道の行程が12.7キロメートルでした。

往路

山中八幡宮

午前9時16分

山中八幡宮

山中八幡宮で旅の無事を祈願。
この2人が今回歩く人。

甘の宮の祠はこの八幡宮の敷地内にあり、一連の行事はこの八幡宮で行われる。

山中地区

山中の集落

県道桜江金城線から市道新山中線へ抜ける。
この辺りには山中地区集落がある。
典型的な中国山地の風景。

まだ山中地区なので、足取りも軽い。

峠からのくだり道

遠くに見える海

峠を越えるとすぐに山の合間から海が見える。
昔の山中の人たちもここからの景色を見て、海がそう遠くないものだと感じていたかもしれない。

また、このあたりから、津和野領から浜田領に変わる。

調査の寄り道

道の途中の地蔵

こちらは埋蔵文化財調査専門員のため、下を見がちで、気になるところは足を止めて寄り道する。

遠くを見る調査スタッフ

こちらは、最近、お医者さんから歩くように言われて、1日1万歩を目標に歩いている。

地域が明るくなる活動

海賊王

舞立橋から県道皆井田江津線を通る。
中国山地の山あいでにぎやかな場所に出た。

なぜか村上海賊に思いを馳せる。

沢津家の前

沢津家前

跡市町の庄屋沢津家の前を通る。
津和野藩の住民が浜田藩の庄屋の前をどのようにして通っていたのか知りたい。

浄光寺の前

跡市交差点を千田町方面へ行くとのぼり道になる。

浄光寺の前

千田町には浄光寺がある。ここには石見妙好人と呼ばれた善太郎のお墓と遺品(市指定文化財)がある。

松が前バス停

峠を越え、くだり道。

松が前バス停

「松が前バス停」は、付近でたびたび熊の目撃情報がある場所。

バス停と大型動物の組み合わせなので有名なジブリのあのキャラクターだといいのに。

海が近くなってくる

くだり道が徐々にゆるくなる。

二宮町

二宮町に入るとまた海が見えてくる。
ここからあと2キロメートルくらい歩くと海に出る。

海に到着

午後0時12分に到着

海に到着

『潮かき』は禊とも言われる。
禊は苦行だと文化庁の職員に教わったが、海に入る気合いとマインドはあいにく持ち合わせていない。

波打ち際で、なんとなく『潮かき』した時間を過ごす。

復路

出発

午後1時26分出発

復路出発

『潮かき』の一連の作業に海水を持って帰ることも含まれているので、海水をペットボトルに入れて、持って帰ることにした。

ホンダワラという海藻も持って帰るらしいのだが、今回は歩いて往復できるかを目的としているため、採取しない。

また、「らくいち」のから揚げ定食のごはんをおかわりしてしまい。
2人とも歩けば禊のような苦行状態になっている。

石見ニノ宮多鳩神社の看板前

二宮多鳩神社看板前

2キロメートルくらい進むと、石見ニノ宮の多鳩神社の看板が見えてくる。

多鳩神社の関係している場所から神楽の古い役指帳が最近見つかった。

古代山陰道

進むと羽代口に出た。

羽代口

ここら辺は古代山陰道の推定ルートになっている。

道が急なのぼりになってくるため、おかわりしたことに後悔する。

跡市町 かんのみや橋

かんのみや橋

千田町の峠を越えて、跡市町へ差し掛かると「かんのみや橋」を発見。
桜江町長谷の山中地区の甘の宮とここのかんのみや橋は何か関係があるのか、気になる。

山羊との交流

山羊がなつく

行きに近寄ってこなかったヤギが、帰りは近寄ってきた。

この近くのおばあちゃんに「おかえり」と声をかけられた。

ほっこり。

苦行が再び

苦行が再び

おかわりの苦行から解放された頃に、また苦行が襲ってくる。

ズボンのゴムがゆるゆるで、歩けば歩くほどズボンがずり下がってくる。

とりあえず、クリップで応急処置をした。

最後の難所

デジャブカーブ

市道新山中線に入り、約2キロメートルののぼり道。
勾配は8パーセント。連続したのぼりのカーブは、「さっきここ通らなかったっけ?」と軽いデジャブ。

このあたりから、走れメロスのメロスの気持ちがわかる気がした。

到着

午後4時25分に到着

無事に到着

何とか無事に到着。手に持った海水も無事。

甘の宮祠

甘の宮に無事に帰ったことを報告

歩いた結果

行き

距離 12.7キロメートル

かかった時間 2時間56分

帰り

距離 12.7キロメートル

かかった時間 2時間59分

合計

距離 25.4キロメートル

かかった時間 5時間55分

目的の検証

海まで歩いて往復できるか

できる

毎年継続できるか

次の年なら行ってもいいが、その後に毎年継続となると、じっくり考えたい。

最後の2ショット

という結果になりました。ご協力いただいた皆さんありがとうございました。

後日、報告

この結果を引っ提げて、後日に山中地区の総代さんに報告したところ、

「あー、あの道は往還道で、ワシも昔はよく歩いて海まで行ってたわー。川戸まで歩くの遠いし、都野津の方が楽だわー。」と言われました。

最初から聞いとけばよかった。