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江津中学校 学校だより11月号

掲載日:2017年2月16日更新
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1年間で千回を超える営み(平成28年11月25日)

 秋もいよいよ深まって、初冬の声も聞かれはじめました。今号は、遅ればせながら「食欲の秋」にちなんで、「食」について書きます。

 平成17年6月、国会において「食育基本法」が成立しました。11年前のことです。食育については、子どもの生活の拠り所である家庭において第一義的に為されるべきものですが、今やそんなことは言ってはいられない状況であり、学校、行政、家庭、地域が連携して進めなければならないところまで、現在の食生活が子どもの心身の健康に悪影響を及ぼしているとの認識の上に立っての内容になっています。本校においても、家庭科の授業の他、各学年とも栄養教諭や専門家を招いて種々の取組を行っているところです。

 ところで、この「食育」という言葉ですが、この言葉のルーツは割と古いもので、石塚左玄という人物が明治31年頃より用いたものと文献にあります。彼はその著書の中で、「今日、学童を持つ人は、体育も智育も才育もすべて食育にあると認識すべき」と述べています。また、同時期、報知新聞編集長であった村井玄斉氏は、「小児には、徳育よりも智育よりも体育よりも食育が先」とも述べています。私は本校の教育目標のスローガンとして「夢を育む学校創り」を掲げ、それを支えるものとして、「確かな学力」「豊かな人間性」「健やかな体」の三つを重点化しておりますが、明治の知識人は、その三つのさらに基盤となるものとして「食育」を位置付けていることがわかります。

 さて、子どもにとって食事は大切であり、先人が説いていますように知徳体の基盤となることも、なるほどと頷くことはできます。しかしながら、頷くことはできても、即実践となると難しいものがあります。「言うは易く、行うは難し」の類いです。しかし、私は、実体験を通して「食育は子どもにとって非常に大切で、待ったなしの課題である」と認識させられるようになったのです。その一つを紹介いたします。

 それは、私が県東部の中学校に勤務していたときのことです。3年担任をしていましたが、クラスの中に非常に気になる女子生徒がいました。彼女は、中2の後半くらいから家庭環境の悪化からか生活が乱れてきました。1学期後半からは、夕方家を出て卒業生と遊び回り、朝方に帰宅し昼間は登校せず夕方まで寝るという毎日を送るまでに乱れは増長していきました。家で食事を摂ることのない毎日が続き、非難めいた言葉に対してはすぐにキレそうになるという精神状態でした。保護者や関係機関と相談を続ける中で、夏休みは、遠方の祖父母宅で暮らすことになりました。何故、遠方の祖父母宅かといいますと、夜間一緒になって遊んでいた仲間たちとまずは離れることが必要と考えたからです。今のように携帯やスマホなどはありませんでしたから、物理的に離れて所在がわからなければ連絡を取ることは不可能だったからです。彼女ははじめは嫌がっていましたが、やはりこのままではいけないという気持ちがあったのでしょう。渋々了解しての山里暮らしが始まりました。私は夏休み期間中、1週間に一度、彼女を訪ねました。1学期にやり残した学習課題と読書の状況を確かめに行くという名目でした。車で1時間半くらいの距離でした。はじめは彼女に大きな変化はありませんでしたが、3回目くらいから明らかに変容が見られはじめ、8月後半にはすっかり落ち着き、優しく穏やかな彼女に戻っていました。
  私は、おばあさんの話に感銘を受けました。「私は孫の生活については一切口出しはしていません。ただ、三度の食事を一緒に食べただけです。」「朝は温かいご飯に具沢山の味噌汁、それと飼っている鶏が産んだ卵があればそれも欠かさず出すことにしています。昼はそれこそあり合わせですが、夜は、朝と同じに温かいご飯と畑で取れた旬の野菜をたっぷり使った煮物は必ず出します。」といった具合です。なるほど彼女に対しては、保護者はもちろん学校や関係機関などが手厚い支援を行ってはいましたが、私は毎日のこの食事こそが彼女の体と心を元に戻してくれたんだなと実感しました。

 食の大切さはこの例だけでなく、児童自立支援施設等に入所せざるを得なかった子どもたちの変容を見ても明らかでした。施設での心のこもった栄養バランスが整った毎日の食事が、冷えきった子どもたちの心を次第に温めていった事例を私は数多く見てきました。 「たかが食事、されど食事」なのです。毎日のこと故、「されど」なのです。1年間で千回を超える営みなのです。

校長 山藤俊治

PDFファイルも添付しています

平成28年度学校だより11月号 [PDFファイル:318KB]

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